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神戸地方裁判所 昭和42年(む)651号 決定

申立人 川西譲 藤原精吾

決  定 〈申立人氏名略〉

右申立人らから、赤野博亮、高階守に対する公務執行妨害被疑事件につき、兵庫県長田警察署長がした接見時間指定処分に対して、準抗告の申立があつたので、当裁判所は、書記官泰山広一を介して兵庫県長田警察署係官から事情を聴取したうえ、次のとおり決定する。

主文

兵庫県長田警察署長が、申立人らの赤野博亮、高階守に対する接見時間を昭和四二年六月一八日午前九時と指定した処分を取消す。

右警察署長は、申立人らに対し、その接見の申出ありしだい直ちに、赤野博亮、高階守に対する接見をそれぞれ許さなければならない。

理由

本件申立の理由は、別紙の準抗告の申立書記載のとおりである。

しかして、当裁判所が長田警察署係官から事情を聴取した結果によれば、同警察署は、昭和四二年六月一七日午前一二時一〇分赤野博亮、高階守の両名を公務執行妨害の嫌疑で逮捕したところ、同日午後三時頃申立人両名が来署して弁護人となろうとする者である旨を申出て右被疑者両名との接見を申出たところ、同警察署長はその接見時間を翌日一八日午前九時に指定したものであることが明らかである。

逮捕された被疑者が逮捕後直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければならないものであることは憲法三四条によつて明らかなところであるから、弁護人となるべきものが被疑者との接見を求めたのに対し、その接見時間を申立時から一八時間も後の翌日に指定するが如きことは憲法上保障された前記の被疑者の弁護人選任権を否定するに等しい処分であつて相当でないことは多くを論ずるまでもなく明白なところである。もつとも刑訴法三九条三項によれば、捜査官は捜査のため必要があるときはその接見の日時、場所及び時間を指定することができるものであることは明らかであるが、その指定は、被疑者の防禦権を不当に制限するものであつてはならないものであることは同項但し書によつて明らかであるから、被疑者に対し憲法上保障された弁護人依頼権を否定するに等しい前記のような接見時間の指定は同項の指定権の濫用に外ならないものであるといわざるをえない。

以上のとおり、長田警察署長が申立人らに対してなした接見時間指定処分が不当に被疑者の権利を侵害するものであることは明白であるので本件申立はその理由があるものと認め、刑訴法四三二条、四二六条二項に従い主文のとおり決定する。

(裁判官 金沢英一)

準抗告の申立書〈省略〉

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